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★ 番外編

ほんとうの自由ってなに?

ルールがないのが自由なの?

でい太

でい太

「あーあ、宿題もルールもぜんぶなくなればいいのに。そしたら朝から晩まで自由にゲームやりまくれるのにな〜。」
???

???

「ホッホッ。……それは、ほんとうの自由かな?」
でい太

でい太

「だれ!?」
ポン太

ポン太

「フクロウは首が270度まわる。」
ホーホー先生

ホーホー先生

「わたしはホーホー。『自由ってなんだろう』を、300年くらい考えているフクロウじゃ。ねむい、、、。きみが言った自由、ちょっといっしょに実験してみんか?」

🎯 このレッスンでわかること

場面 1

もしもルールがぜんぶなくなったら

ホーホー先生

ホーホー先生

「では想像してごらん。今日から世界のルールが、ぜーんぶなくなった。宿題もなし、時間割もなし、法律もなし。きみは何をする?」
でい太

でい太

「やった! ゲームやりまくる! お菓子も食べまくる! 最高じゃん!」
ホーホー先生

ホーホー先生

「ふむ。じゃが、ルールがないのはきみだけじゃない。みんなルールなしじゃ。……そこへ、体の大きい上級生がやってきて、こう言った。『お、いいゲーム機持ってんじゃん。もらってくぜ!』。」
でい太

でい太

「ええっ!? それはダメだよ、ぼくのだもん!」
ホーホー先生

ホーホー先生

「ほう? 『人のものを取ってはいけない』——それはルールじゃな。ルールがない世界では、取るのも自由。きみはそれを『ダメ』と言えんのじゃよ。」
ポン太

ポン太

「落ちてるドングリは取り放題。」
でい太

でい太

「そっか……。ルールがないと、力の強いやつだけが自由で、ぼくみたいな子どもは、いつも取られる側になっちゃうんだ。」
ホーホー先生

ホーホー先生

「そのとおり。ルールのない自由は、いちばん強い1人だけの自由。しかもその強い者も、もっと強い者が来たら取られる。つまり——だれの自由も守られないんじゃ。」

💡 ここがポイント

「やりたい放題」の世界では、結局、だれかに支配される世界になってしまう。

場面 2

ルールは自由を守る発明

でい太

でい太

「じゃあ先生、ルールって、ぼくらをしばるためじゃなくて……」
ホーホー先生

ホーホー先生

「うむ。みんなの自由を守るための発明なんじゃ。『人のものを取らない』というルールがあるから、きみは安心してゲーム機で遊べる。『順番を守る』というルールがあるから、小さい子もすべり台で遊べる。ルールは自由の反対じゃない。自由を守るためのものなんじゃよ。」
ポン太

ポン太

「ルールえらい。」
でい太

でい太

「でもさ、先生。学校のルールって、守らされてる感じがしてイヤなときもあるよ。『廊下を走るな』とか『宿題やれ』とか、勝手に決められてるじゃん。」
ホーホー先生

ホーホー先生

「ホッホッ、いい質問じゃ。じつはそこが、いちばん大事なところでな——」

💡 ここがポイント

ルールは自由の反対じゃなくて、みんなの自由を守るための発明。でも「守らされてる」と感じるのはなぜだろう?

場面 3

話し合いに参加することが、きみの自由の権利

ホーホー先生

ホーホー先生

「ルールには2種類ある。だれかに押しつけられたルールと、みんなで話し合って決めたルールじゃ。押しつけられたルールに従うだけなら、それは王様の家来と同じ。じゃが、自分も話し合いに参加して決めたルールなら——それに従うことは、自分で決めたことに従うということ。つまり自由なんじゃ。」
でい太

でい太

「わかった! じゃあ掃除当番の話し合いで『ぼくは掃除やりたくないです!』って意見を言えばいいんだね!」
ホーホー先生

ホーホー先生

「ホッホッ、ちょっと待った。それは意見ではなくて、わがままじゃな。」
でい太

でい太

「え、ちがうの? 自分の思ったことを言うのが意見でしょ?」
ホーホー先生

ホーホー先生

「話し合いというのはな、『自分の得』を取り合う場所じゃない。『みんなにとって一番いい答え』をさがす場所なんじゃ。だから意見を言うときは、こう考える。『ぼくだけじゃなくて、クラスのみんなが納得できるやり方はどれだろう?』とな。」
でい太

でい太

「うーん……。たとえば『掃除やりたくない』じゃなくて、『同じ人ばかり大変にならないように、当番を順番に回すのはどう?』って言う、とか?」
ホーホー先生

ホーホー先生

「そう、それじゃ! それなら掃除がきらいなでい太も、まじめにやっている子も、みんなが納得できる。みんなのことも考えた意見が集まって決まったルールなら、全員が『自分たちで決めたルール』と思える。だからみんなが自由になれるんじゃよ。」
でい太

でい太

「だまってると『押しつけられる側』のまま。でも、自分の得だけ言ってもダメで……みんなが一番納得できる答えのために意見を言うのか。」
ホーホー先生

ホーホー先生

「うむ。それこそが、きみの自由を手に入れるための権利なんじゃ。話し合いに参加しなかった人は、ほかの人が決めたルールの中で生きるしかない。じゃが、みんなで話し合えばみんなで納得できる。
ほれ、友だちとドッジボールをするとき、『小さい子は当てられてもセーフにしよう』ってみんなで決めたりするじゃろう? あれこそ立派な『自分たちでルールを決める』じゃ。だれか一人が決めてしまうのではなく、みんなで決めるから楽しく遊べるんじゃよ。」
ポン太

ポン太

「タヌキの世界は弱肉強食。」

💡 ここがポイント

話し合いは「自分の得」を取り合う場所じゃなくて、「みんなが一番納得できる答え」をさがす場所。そこに参加して意見を言うことが、自分の自由を手に入れるための権利。

場面 4

その「やりたい」は、ほんとうにきみのもの?

ホーホー先生

ホーホー先生

「さて、最後にいちばんむずかしい話じゃ。でい太、きみはさっき『ゲームやりまくりたい、お菓子食べまくりたい』と言ったな。それは……ほんとうにきみの中から出てきた『やりたい』かな?
でい太

でい太

「え? どういうこと? ぼくがやりたいんだから、ぼくの気持ちでしょ?」
ホーホー先生

ホーホー先生

「では聞くが、テレビでお菓子のCMを見たあと、急にそのお菓子が食べたくなったことはないか? YouTubeを1本見終わったら、おすすめに出てきた次の動画が見たくなったことは?」
でい太

でい太

「……ある。見る前は、見たいなんて思ってなかったのに。」
ホーホー先生

ホーホー先生

「その『やりたい』は、きみの中から生まれたんじゃなくて、他の何かによって作られたものかもしれん。前に『インスタのわな』で学んだじゃろう? アプリやCMは、きみの『やりたい』を作り出すプロじゃ。作られた『やりたい』に引っぱられて動くのは、自由に見えて、じつはあやつられているのと同じなんじゃよ。」
でい太

でい太

「じゃあ、どうすればいいの? ぼくの「やりたい」は全部ウソの気持ちってこと?」
ホーホー先生

ホーホー先生

「いや、そうではない。ほんものの『やりたい』も、ちゃんときみの中にある。だから、まずは自分にこう聞いてみるんじゃ。『これは、ほんとうにぼくがやりたいこと? それとも、やりたいと思わされてること?』とな。」
でい太

でい太

「うーん……。自分に聞いたら、わかるのかな?」
ホーホー先生

ホーホー先生

「試しにやってみよう。でい太、きみが『何年たってもやりたい』と思うことはなんじゃ?」
でい太

でい太

「スキー! かっこいい技ができるように、もっとうまくなりたい!」
ホーホー先生

ホーホー先生

「では、おすすめに出てきた動画を2時間見ることは? 3年後もやりたいかな?」
でい太

でい太

「……ううん。見おわったあと、『あー時間むだにした』って思うもん。」
ホーホー先生

ホーホー先生

「ほら、もう答えが出た。あとで『やってよかった』と思えるのが、ほんものの『やりたい』。あとで『時間をむだにした』と思うのが、他のものによって作られた『やりたい』じゃ。自分に聞けば、きみはちゃんと見分けられるんじゃよ。」
でい太

でい太

「たしかに……。でもさ先生、動画を見てるそのときは、やめられないんだよ。『次も見たい』って思っちゃって。」
ホーホー先生

ホーホー先生

「そう、そこが怖いところじゃ。あやつられているまっ最中のきみは、冷静に選べない。じゃから——冷静なときのきみが、先に決めておくんじゃ。『動画は1日1時間。そのあとはスキーの練習』とな。」
でい太

でい太

「あ、そうか。ねぼうしないように、目覚ましをセットしておくのと同じだ!」
ホーホー先生

ホーホー先生

「うまいこと言うのう。自分ルールは、がまんのためのものじゃない。 ほんとうにやりたいこと(スキー)を、 他の何かによって作られた『やりたい』(ダラダラ動画)から守るための武器なんじゃ。 自分で決めたルールを守るとき、きみはアプリにもCMにもあやつられておらん。自分のやることを決めるのは、自分。それが、いちばん強い自由じゃよ。」
ポン太

ポン太

「Marionette / BOOWY」

💡 ここがポイント

見分け方は「あとでどう思うか」。あとで「やってよかった」なら本物のやりたいこと、「時間をむだにした」なら外から作られたやりたいこと。やり始めてしまうと冷静に選べないから、冷静なときの自分が先にルールを決めておく。自分ルールは、本当にやりたいことを守るための武器だよ。

場面 5

自由な人ってどんな人?

でい太

でい太

「先生、わかってきたよ。ほんとうの自由って『なんでもやりたい放題』じゃないんだね。」
ホーホー先生

ホーホー先生

「うむ。まとめると、こうじゃ。

① ルールのない自由は、結局だれの自由も守られない。
② みんなで話し合って決めたルールは、みんなの自由を守る。話し合いに参加して意見を言うことが、きみの自由を手に入れるための権利。
③ 『やりたい』の中には、つぎの2つがあるぞ。
  • 本当に自分がやりたいもの
  • 他の何かによって作られたもの
立ち止まって自分に聞き、ほんとうに自分のやりたいことをできる人が、ほんとうに自由な人じゃ。
でい太

でい太

「なんでもできる人じゃなくて、みんなで決めたルールの中で、ほんとうに自分のやりたいことをできる人が自由な人、か。よーし、じゃあ今日は帰ってゲームやりまくる…………って、あれ? 今の『やりたい』、ほんとうにぼくの気持ちかな?」
ホーホー先生

ホーホー先生

「ホッホッ! その『あれ?』が言えるようになったら、もう大丈夫じゃ。ではまた、どこかの森で。」
ポン太

ポン太

「自分が本当は何をしたいのか、わからない大人もいるよね。」

💡 ほんとうの自由とは

ほんとうに自由な人は、なんでもできる人じゃない。
みんなで決めたルールの中で、ほんとうに自分のやりたいことをできる人

🖊 やってみよう

Q1. ルールが1つもない世界で、いちばん「自由」になれるのはだれ?(3択)


Q2. クラスのルールに納得できないとき、「自由」につながる行動はどれ?(3択)


Q3. ホーホー先生の言う「ほんとうに自由な人」はどんな人?(3択)


Q4. きみの「自分ルール」を1つ作ってみよう。ほんとうにやりたいことを守るためのルールだよ。

👨‍👩‍👧

保護者の方へ

このページでは、ルソー『社会契約論』(第1編第8章)における自由の3段階を、子ども向けの会話で紹介しました。

場面3の「みんなが一番納得できる答えをさがす」は、ルソーの「一般意志」(私利私欲の総和ではなく、全体にとっての最善を目指す意志)の考え方に基づいています。話し合いへの参加を通じてルールを「自分たちのもの」にすることが自由の条件である、という主張です。

場面4は、同じくルソーの「欲望に操られて生きるのは奴隷状態であり、自分で決めたルールに従うことが自由である」という道徳的自由の考え方を、わかりやすく置きかえたものです。 現代は高度に発達したマーケティング技術によって、本来自分には必要でないものまで欲しくなったり、見たくなったりさせられてしまいます。 そのため、本当に自分に必要なものは何なのか、たまに立ち止まって考えてみてほしいと思い盛り込みました。少し難しい内容ですが、大人に成長する過程で思い出してもらえればと思います。

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